かめ山ぱん工房




ある街に「かめ山」と呼ばれる山がある。
遠くから見ると、
大きなこぶと小さなこぶが連なっていて、
それがカメに見えるからだ。


それが、本当の名前なのか、
ただのあだ名なのかは、誰も知らない。



かめ山へは、田んぼ道を
ひたすらまっすぐに進む。

途中までは舗装されて
わりと広い道が山へ続くけど、
そのうちに坂道にさしかかる。

いつの間にか、田んぼはなくなり、
道の両側は木で囲まれている。


もうかめ山の中にいるのか、
それとも、まだ麓の方か。
いざ近くまで来ると、
意外とわからないものなのである。



その山道の道沿いに、
ぽつんと、1軒だけ、
小さなパン屋さんがある。


その名も、「かめ山パン工房」
そのまんまである。

小さな三角形の木の看板。
手書きされた文字。
ひっそりと、建物の前にたたずむ。

外観は、白い、といっても
薄汚れてクリーム色。
屋根は、赤い。



ダークブラウン色の木のドア。
取っ手も、木の幹で作られたようだ。


週3日しかオープンしないのだけど
それ以外は何をしているんだろう。
この建物には工房と、
販売スペースしかないから
きっと住居は別にあるはずだ。



ドアを開けると
パンのいい匂い。


ちょっと暗めの照明だけど
それが良い雰囲気を醸し出す。



並ぶのは、
シンプルなロールパン、
硬めの生地にシチューが詰められて
こんがりチーズののったグラタンパン、
ちょっと暗めの色のクロワッサン、
ごろごろお芋が練りこまれているパン、
かめ山をまねた形のメロンパン、
こんもり山型の食パン、、、


、、、ぜんぶおいしそうだ。



レジのところには
ちょっとしたクッキーなんかもおいている。


グラタンパンを買うことにした。
そして、かめ山パンもトレイに乗せた。
かわいい。


レジでは、やわらかな表情の方が
手際よく袋に詰めてくれた。
紙袋なのが、なんだかうれしい。



運転をしながらかめ山パンをほおばる。
サクッと、しっとり、うん。おいしい。



帰りは、来た道をそのまま下って行く。
今は、かめ山のどの部分にいるんだろう。
また同じ疑問を抱く。




かめ山をバックミラーに見る前に
手元のかめ山はすでになくなっていた。





*この物語は、フィクションですが、
「亀山」は実在する山です。

いしかわあやか